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『ノーベル平和賞最年少受賞・マララさんの父親であるジアウディン氏が来日!
スーパーダディ協会×ジアウディン氏 交流イベント詳報』Vol.3

 
 


「ジアウディン・ユスフザイさんインタビュー」
 〜家族の美しい調和からすべてが始まる〜



イベント終了後、過密スケジュールにも関わらず、ジアウディンさんにインタビューにも応じていただきました。日本の父親の印象を伺いつつ、ジアウディンさんの子育て論や日本の父親に伝えたいメッセージをお伺いしました。


 

 

【スーパーダディ活動は草の根的な意識改革】

 
───スーパーダディ協会のメンバーに会ってみて、あるいは来日してみて日本の父親についてどういった印象をお持ちになりましたでしょうか?

スーパーダディ協会のみなさんにとても良い印象を持ちました。そして、希望をもらいました。日本では男女格差が大きいように見えていました。なぜなら、家事はすべて妻に押しつけてしまっている。そして、夫は妻に任せっきりで家庭を回していくことに参加することなく、責任を平等に分かち合っていないように見えていたからです。


先ほどもお話しましたが、男女格差には2種類あります。ひとつは家の中での格差、もうひとつは、家の外、つまり職場での格差ですね。家庭では母親がすべての仕事を負います。子どもの面倒を見るのも、家事も、です。一方、職場で女性は男性に比べて活躍の機会が限定的で、同等のレベルで働いている男性よりも給料が安いといったこともあるようですね。

 
そんな日本の状況下でのスーパーダディ協会の活動は、まさに、草の根的な意識改革のためのチャレンジであると思います。このチャレンジは数十年かかるのかもしれません。なぜなら、この意識改革は、家庭生活において習慣化されてきたマインドや行動を変えていかなければならないからです。

スーパーダディのみなさんが目指しているのは、家庭内の意識改革だと思いますが、結果的にそれが家の外へ拡がり、さらに世界へと波及していくのです。家族のなかで男女の平等を重んじるようにして、夫婦で責任を分かち合っていれば、家の中での男女平等が家庭から離れた職場にもインパクトを持って反映されていくようになることでしょう。


私はスーパーダディ協会の活動にとても感銘を受けました。SDAの口ひげのロゴマークはとてもイイですよね。私は大好きですよ。このロゴマークのように口ひげをはやしている身としては、このシンボルマークのおかげで皆さんにとても親しみを感じることができました(笑)。



 

 

【“社会的タブー”という名のハサミが娘の翼を切ってしまう】

 
───ジアウディンさんの子育て論についてお話をいただきましたが、マララさんの「翼を切り取らなかっただけだ」という言葉の意味について、もう少し詳しくお聞きしいたいのですが。
 
先ほども触れましたが、私は家父長制が色濃く残るパキスタン北部の田舎町で生まれ育ちました。そんな場所がまだまだ世界中どこにでもあります。家父長制の色濃く残る社会において、大人たちは“社会的タブー”という名のハサミを持っています。そのハサミが女子である娘や姉妹の翼を切ってしまい、彼女たちを“本当の自分自身”にさせないようにしてしまうのです。

少女たちは家の中に閉じ込められ、少年たちのような自由が与えられない。それが“当たり前のこと”として今でもまかり通っているのです。少女たちは、ある年齢を過ぎたら家の中に縛られてしまう。仮に小学校に通うことができたとしても、中学校や高校には行くなと言われてしまう。中学・高校まで通えたとしても、次は「大学になど行かなくてもよい」となり、大学を卒業したとしても「仕事などしなくてもいい」と言われる。彼女たちが歩もうとする道をいちいち拒み続けるプレッシャーが常にあり、彼女たちを疲弊させてしまうのです。



 

 

【父親としてマララを守る、ということ】

 
───「私はマララに何かをしたのではなく、何もしなかっただけだ」とお話されていました。日本の親は何かとわが子に何かしてあげようと思いがちなのですが、ジアウディンさんはどうお考えになられていますか?
 
親には娘たちの翼、つまり、潜在能力をカットしてしまおうとするハサミを持っています。そのため、彼女たちは自分のために生きることを許されず、家族にもコミュニティにも国にも貢献することが難しくなっているのです。マララはそんな環境で育ちました。

「翼を切らない」という意味は、言うなれば、「父親としてマララを守る」ということです。そして、私はマララが自分で望む大人になるための勉強ができる環境を与えてきたということです。マララが自由な発想で誰とでも自分の意見を自由に話すことができるようにしてあげました。

家族だけでなく、誰が家に来たときでもマララの想いや考えを話せるようにしてあげ、それを皆で共有してきました。私の親戚やマララの従兄弟、近所の人々などなど……、誰が来てもそのようなことをやり通してきました。

 
そんなマララを抑えつけようとする人々は、私をも抑えつけようとしました。そういう人たちは、決して彼女を独立したひとりの人間として見ようとはしなかった。だからこそ、私はそういう人たちにマララと一緒に立ち向かっていったのです。

親がわが子に何かしてあげようと思うのは親として自然なことです。そして、男女不平等を無くすということは、大きなチャレンジでもあります。そのチャレンジは、まずは家庭から始まります。私はマララに何かを「してあげる」というよりも、「してみせる」ということを心がけてきたのかもしれないですね。



 

 

【男女平等を学ぶことは何より大切】

 
───「してみせる」とはどんなことでしょうか?

「素敵なこととは何か」、「正義とは何か」「責任を分かち合うとは何か」などなど……。そのためには、何はともあれ、まずは夫として妻を尊敬することがとても大切であると思います。私は常に妻を対等なパートナーであると考えて一緒に暮らしてきました。妻を愛し、尊敬してきました。子どもたちは、それを見て学びました。それだけでいいのです。いちいちそれを説明する必要はありません。それだけで、子どもたちは男女の平等について学ぶことができるのですから。

 
子どもを育てていくなかで、男女平等について学ぶことは何よりも大事なことだと思います。「男の子はこうあるべき」、「女の子はこうあるべき」などと決めつけてはいけません。皆、それぞれに違うのですから。画一的にしようという考えは良くありません。
 
さらに、男女格差をなくそうと思うのであれば、男女それぞれに教育の機会を均等に与え、男女関係なく同じように期待をしてあげるべきです。あらゆる面で女の子たちは、男の子より足りない部分があるなどと思う必要なんてありません。女の子たちに「男性よりも知性が劣る」などと思い込ませるなんて、言語道断ですよね。男の子も女の子も同じように賢く、能力に満ちあふれ、何にでもチャレンジできるんだよ、ということを教えてあげるべきではないでしょうか。


 

 

【ハッピーな家族が増えると国全体がハッピーになる】


───今、日本では都会を中心に共働き夫婦が増え続けていて、夫婦共に子育ても家事もしようとする人が増います。とはいえ、まだまだ地方では家父長制が色濃く残っている地域もあるのですが、日本のパパに向けてメッセージを最後にいただけますでしょうか?

自分の経験から言えるシンプルなメッセージ。それは、「家庭は人生の基盤である」ということです。家庭こそが「人生の学び舎」なのです。家庭で社会的なものの見方を身につけ、政治がどう影響するのかを感じ取り、日々の生活を通して経済を知るのです。つまり、家庭が最も人としての基礎を学べる場なのです。


私たち大人は国だとか社会だとか……、何かと大きな視点で語ろうとしてしまいがちですが、国も社会もコミュニティもすべてが家庭から始まっているのです。大切なのは、心や頭、マインドではないでしょうか。ここからすべてが始まっているのです。

 
日本で都会に住む人々が中心に男女平等を目指す父親が増えているけれども、まだまだ男女格差の是正が進んでいない地方に住む父親たちにぜひ、お伝えしたいことがあります。その地域の人々の半分が行動すれば、その街は変わり、進化することができます。「いかに経済を上向きするか」ということではなく、「いかにハッピーになれるか」ということを目指していいただきたいですね。男女間の平等や相互の協力、責任の分担を行う家族こそが、それぞれのコミュニティに幸福や喜びに満ちた生活をもたらすのです。

男性だけが社会に参加し、女性はそれぞれの家庭で家事と子育てだけをしていればいいといった古い価値観のコミュニティでは、家族間の分断が生まれて家族そのものを壊してしまいます。もっと男女ともに心を開きましょう!

時には男性が家事をし、女性が外へ出るといったことでもいいじゃないですか。それが男女の相互理解の始まりになるはず。そこから家族の美しい調和が生まれていくに違いありません。そんなハッピーな家族が増えていけば調和が拡がり、いずれその国全体がよりハッピーになっていくことでしょう!

ジアウディン・ユスフザイ

Ziauddin Yousafzai

ノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんのお父さん。長年パキスタンの教育に携わり、1995年男女共学の小学校「クシャル・スクール」を設立。1997年長女マララ誕生。2008年以降女子教育を否定するイスラム過激派から度々殺害予告を受ける。タリバンによって娘マララさんが銃撃を受けるが一命をとりとめる。その後家族でイギリスのバーミンガムに移住。12年ゴードン・ブラウン国連グローバル教育担当特使の特別顧問に就任。2014年娘マララさんが17歳の時にノーベル平和賞を受ける。2019年スーパーダディ協会とコラボイベントを行う。パキスタンのスーパーダディ。

取材/文:國尾一樹(SDAマガジン編集部)
写真:SHOKO(http://www.shokophoto.com

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