『ノーベル平和賞最年少受賞・マララさんの父親であるジアウディン氏が来日!
スーパーダディ協会×ジアウディン氏 交流イベント詳報』Vol.2

 
 
イベントでジアウディンさんのお話がひと段落したところで、スーパーダディ協会のメンバーからいくつか質問が投げかけられました。メンバーからの3つの質問と、それに関するジアウディンさんの回答をご紹介します。


『ジアウディンさんへの3つの質問』

 
(Q1)
日本では子どもたちが教育を受けることは当たり前過ぎるからか、自ら教育を簡単に放棄してしまう子どもが多い。マララさんは当時、女子が教育を受けたいと願い行動することはタリバンからの圧力もあって命がけの行為だったと思います。実際に命を狙われて怖い思いをされたわけですが、女子である自分たちにも教育が必要なんだと思い続け、実際に行動することができたのはナゼですか?(ニュースキャスター・小森谷徹)
 



 
ご指摘のとおり、ヨーロッパやアメリカ、日本などの先進諸国の10代の若者たちは、あまり学校に通うことが好きではありませんよね。なぜなら、学校に通うことや教育というのが“当たり前”になっているので、その本当の大切さを感じられていないのだと思います。
 
マララは、あるスピーチでこう言いました。「私たちは物事を聞くことができるけれど、本当に大事なことを聞いていない」と……。そして、「見ることができるのに、本当に大事なことを見ていない」とも。マララは、教育を受けたいという、強い意志を持っています。“学ぶことへの意欲”ですね。それがマララの基盤にはいつもありました。
 
なぜなら、マララは私たち一族のなかで、始めて学校に通うことになった女の子だったからです。マララが教育を受けることがなかったなら、きっと、学校に通うことができなかったその他大勢の女の子たちと同じことになっていたでしょう。そして、自由も、自らの名で身を立てようとする未来も永遠に葬られてしまうかもしれないといった危機感を持っていました。

自分の意志で外出することも、社会のなかで医者や弁護士になって役割を果たすなど、全ての可能性の源となるのは、教育であるとマララは信じていました。マララのように家父長制が色濃く残る地域で育った女子にとって、教育は家父長制の社会を生き抜くための武器になるのです。


教育を受けると、単に数学や科学などを学ぶだけでなく、それ以上のことを学ぶことができます。それは、古くから伝わる因習からの解放、ひいては自由の獲得です。つまり、“自分自身になる”ための方法です。それくらい、女性にとって教育というのは価値があるものなんです。

 
みなさん、タリバンをご存知かと思いますが、そのタリバンが2009年にパキスタンの400か所以上の学校を破壊しました。そして、女子への教育を完全に廃止してしまったのです。その時、マララは激しく泣き叫びました。なぜなら、彼女の夢が粉々に打ち砕かれてしまったからです。マララは学校で学び、医者になりたいという夢を持っていました。その夢を叶えるためにはどうしても必要な学校が焼かれてしまったのです。それは、彼女にとってはとても悲劇的な経験でした。
 

 
小森谷 家父長制が根強い地域でありながらも、マララさんが医者や弁護士になりたいと思うような教育を小さい頃からしてこられたのでしょうか?
 

 
他のお父さんたちと何ら変わりはありませんよ。ただ、私は「父親として何をしてきたのか」と聞かれると、いつも2つのことについてみなさんにお話ししています。

 
1つめは、「何かをしたことはありません。何もしなかったのです」と答えます。つまり、私は娘の“翼”を切らなかったのです。私たち親は、子どもたちの自由な意志を決して抑えようとしてはいけないのです。社会は父親にハサミを持たせています。それは、子どもの翼を切るためのハサミです。しかし、私はそんなことはしたくありませんし、他の親にもさせたくなかった。だからこそ私はハサミを捨て、山のように立ちはだかり、子どもたちを守る壁となったのです。

2つめは……、これは父親であれば誰でもできることですが、わが子を信じてあげるということです。マララがまだとても幼い頃、私はマララがこの世に存在していることだけでも感謝するようになりました。そして、マララと一緒にいる時、彼女はいつも私にとって特別な存在であると思うようになっていったのです。

マララがやることなすことすべてにおいて私は感動してきました。そして、彼女にこう言い続けてきました。「よくやった!」「スゴい!」「驚いたね!」と……。その頃はまさか、マララがノーベル平和賞を受賞することになるなんて夢にも思っていませんでした。

 
マララがまだ2〜3歳で幼稚園に通っていた頃に小さなトロフィーをもらって帰ってきたことはありましたが、そんなマララがノーベル平和賞を受賞するなんて、まさに月にまで飛んでしまうほどの喜びでした(笑)。考えてみれば、子どもたちにとって初めて出会う「人」は、母親、そして父親です。「両親がわが子を信じてあげなければ、誰が信じてあげられるでしょうか?」と、私は思っています。
 

 
(Q2)
スーパーダディ協会はそんなに大きくはない団体なのですが、どうやって見つけてくださったのでしょうか? また、この協会のどういうところに興味を持ってくださったのでしょうか?(会社員・高尾研也)

 


とても大事な質問ですね!(笑)。私からみてスーパーダディ協会のみなさんは、この国で最も大事な任務を負っているのではないかと思います。それは、男女格差をなくすための改革という大きな任務です。あらゆる国々の社会やコミュニティにおいて期待される改革は、すべて家族から始まるものだと私は思っています。
 
そして、その家族の代表は父親であり、母親です。いつの日か、スーパーマザー協会も誕生するのかもしれませんが、何はともあれ、今、スーパーダディ協会の皆さんは家庭のなかでの責任を果たしていくことが大事です。父親は家庭内での男女の平等を重んじ、皆で幸せを分かち合う責任を負うのです。

決して妻に任せっきりにしてはいけません。あなた方家族のすべてを共有するのです。そして、家族以外の人々にも同じように共有していく。そうやって家のなかに平等をもたらすことができれば、家の外のあちこちに平等が広がっていくことでしょう。私はそう信じているのですが、きっとここに集まっているみなさんも同じ想いですよね?

男女格差の問題を考えるとき、元凶となるのは過去の父親と言いますか、前時代的な考えのままの父親たちです。彼らは家父長制にドップリと漬かってしまっていて、男女平等という考えに見向きもしません。そんな古い考えの男性は高い場所であぐらをかき続け、勝手にすべてを決め、娘たちより息子たちをひいきし、妻を対等なパートナーとして扱わない。つまり、古い考えの父親たちが今の男女格差における元凶そのものだったわけです。しかし、新しい考えを持つようになった父親たちは、それらの問題を解決することができるのです。

家庭内の男女平等は、ただ唱えるだけでは実現しません。行動してこそ、実現するものです。では、子どもたちに男女平等を学んでもらうために、私たち父親は何をすればいいのか。それは、私と妻がどう暮らしているのかを子どもたちに見てもらうのです。

私と妻が対等に権利を持ち、お互いを尊敬し合い、支え合ってさえいれば、何も言わなくても子どもたちはその姿を見て自然と学びます。お父さんとお母さんは平等だし、尊厳も同じで家のことは何でも2人で助け合う。家庭内で責任を分かち合い、家の外でも同じようにするのです。すると、そんな両親の暮らし方を見て、子どもたちは自然に学びます。何も壁にスローガンといいますか、目標を掲げるように書く必要なんてありません。親が行動すれば、子どもたちはそれを見て学ぶ。それだけでいいのです。

 
 
(Q3)
保育園の運営をしていて、子どもたちに“教えようとする”ことが、ジアウディンさんが言うように、“子どもたちの才能(翼)を奪う”ことになってしまうと思っています。僕たち大人が知っている常識や既成概念を子どもたち押しつけることなく子どもたちの才能を如何に伸ばしていくかという保育を大事にしていきたい。それを子どもたちだけでなく保護者の方たちにも伝えたいが、そのためのヒントになるようなお話をお聞きしたい。(小規模保育施設「こどもなーと」代表・和泉誠)

 

 
社会には多くのタブーがあります。なかでも、我々が立ち向かっていくべきこと。それは、人権を妨げているタブーです。ただ、タブーに立ち向かうということは、最初はとても困難なことになります。なぜなら、1人だけが違う主張すれば、その人には社会的な圧力がかかるからです。
 
昨年、私は「Let Her Fly」という本を出版したのですが、そこで私が強調したかったのは「誰かのために変革をもたらす最初の人。それは、あなだた」という言葉です。何ごとにおいても、初めてのことに立ち向かうのはとても難しいこと。しかし、成し遂げることができれば古い自分から脱却できるのです。そうなれば、次に前進することがたやすくなるはずです。

 古いしきたりや風習に立ち向かうとき、最初はあなた1人だけかもしれません。周りは漆黒の闇で味方は1人もいないかもしれない。しかし、変革を信じて挑み続けていれば、いつかきっとそれは起こるでしょう。あなたの同志が、2人になり、やがて3人、4人、5人……、10人と増えていくのです。10人が20人に、さらに40人と倍々に増えていけば、皆が変革に向かって突き進むことができるようになるはずです。そしていつしか、あなたの信念が社会の規範となっていく。今現在では想像できないようなことが、20年後、30年後にはきっと、当たり前のことになっていることでしょう。(29分)

 

 
質疑応答が終わったところで、スーパーダディ協会代表・高橋一晃とジアウディンさんとのやりとりが行われました。
 

 
高橋 スーパーダディの活動は、男性の意識改革です。なので、お話を聞いていて同じ気持ちになりました。僕は日本人なので、今は日本でしか活動していませんが、世界に同じような考えを持つ人がいることを知り、とても力が湧きました。ここは東京です。東京には僕らスーパーダディ協会のメンバーと同じ意識を持つ人父親が少なからず存在します。しかし、東京を離れて地方に行くと、まだまだ男性は家父長制に近い古い考えが残る地域がたくさんあります。そんな父親たちに向けて、僕らは楽しく子育てをして、楽しく家事をする。そういう写真をどんどんアップして共鳴してくださる方をどんどん探していきたいと思っています。

ジアウディンさん 今、協会のメンバーは何人くらいですか?

高橋 協会のコアメンバーは60人くらいです。ソーシャルメディアの会員で言いますと、1500人くらいが繋がっています。

ジアウディンさん 次に東京に来るときには、6万人のスーパーダディになっているかもしれないですね。いや、60万人かな?(笑)

高橋 今後は僕らの活動をなるべく英訳して世界に広めていこうと思っています。なぜなら、日本だけでなく、世界中で賛同してくれる人たちにどんどん手を挙げてもらって、ワールドワイドに盛り上がっていけたらいいなあと思っています。ですので、お力添えをよろしくお願いいたします!

ジアウディンさん 心は共にあります。いつでも支えになりますよ。素晴らしいですね!


SDA事務局 ぜひ、スーパーダディ協会のアドバイザーになっていただきたい。

 
ジアウディンさん みなさんはすでにとても素晴らしいダディですから、私はみなさんのサポーターということで充分だと思いますよ! ぜひ、スーパーダディ協会のみなさんのサポーターになりたいと思います!